「写真の物理性の消滅」というタイトルを付けた、写真に関する美学論文。
ざっとだけ概略を言うと、
写真から物理性を消滅させると、写真を撮影した、写真を見た、という記憶しか残らなくなる。やがて、記憶する為に写真を撮るようになり、写真それ自体が残ることは少なくなり、写真を撮ったはずという記憶にしか残らなくなる。という論文。当時、デジタルカメラも、カメラ付き携帯電話も無かった時代だったから、今から考えれば、あれを書いていて良かったと思っている。実際、担当教授は面白いと言ってくれたのだが、学内で論文発表をした時には、随分とシラケた思いになった。
美学論文というものは、自分が美しいと思うものをしっかりと捉え、それを言葉に置き換えることで出来上がる。自分の内面にある「モヤっ」としたものに向き合うと、「他の人から見たらどうなんだろう?」という不安がずっとつきまとう。「モヤっ」としたものだけに集中して、「他の人から見たらどうなんだろう?」が消え去ると、自他ともに認める「変人」が出来上がる。あの論文発表をした時、僕はまだ、「変人」になりきれていなかったんだろう、と思う。
今。改めて、この時代は面白い、と言ってみる。
皆が「変人」かもしれないが、それが「普通」。
やっぱり日本人なんだなあと呟いてみる。
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