上野樹里さんが演じる女の子の役柄。そこには、彼女ならではの、まっすぐな性格があるように思える。個人的には、そのまっすぐな感じにとても好感を持っているので、久しぶりにテレビに飛びついた。
ドラマでは、5人の登場人物が、Twitter上で呟いた自分を現実世界に持ち込もうとすることからストーリーが始まる。上野さんは、ハルというハンドルネームを持つ私立高校の非常勤講師、水野月子役として出演。瑛太さんは、ナカジというハンドルネームを持つカメラマン、中島圭介役として出演している。
ある日、Twitter 上のユーザたちが、実際に会う(オフ会)約束を交わす。ハルは、友人、西村光を誘ってオフ会に参加する。このオフ会の席上で、ほとんどの参加者が、現実の世界の自分を偽って自己紹介をする中、唯一、ハルだけが、本当のことを話す。つまり、ハルを除く、参加者のすべてが、大なり、小なり、嘘をついていることになる。もっとも、ナカジの自己紹介は、それが嘘であったか、虚飾であったか微妙なところ。かくして、ハル、ナカジを除く参加者が、いかに述べるような、「なりすまし?」を行っている点が、ドラマの展開を左右することになる。
たぶん、Twitterを知らない人が抱くネット社会を分かり易く象徴すると、こういう演出なんだろうなあ。でも、この演出が、ドラマそのものの重要な伏線になっているようなので、ここは、我慢のしどころでもあるのだけど。うーん。
なりすまし
「なりすまし」とは、あたかも現実世界に存在する人物のように振る舞うこと。この言葉は、ネット社会が生まれてからできた言葉ではないのだが、最近の話題では、「なりすまし」と聞くと、ネット上での問題のように響くものがある。
もっとも、ドラマの登場人物たちの出会いは、現実世界ではなくネット上の空間から始まっているので、それぞれのユーザが、ネット上に作った仮想的人格(ドラマの中では、職業とそれにまつわる生活のこまごまとしたもの)を現実世界に持ち込むことになる。この場合、これは、「なりすまし」ではなく、厳密には、「なりきり」と言うべきだろうか?
いずれにしても、本当の自分と異なる自分が現実世界に生き続けることなど、到底、あり得ない。だからこそ、何気ない嘘、その歪みの中で、このドラマの登場人物たちは苦しむことになる。そして、そうした嘘がネット上だけでなく、現実世界の中でも起きているシーンが続く。
リンダというハンドルネームを持つ市原薫は、中堅出版社の雑誌編集者だが、上司の奥田真理子の要望の餌食にされる。ここにも、嘘。目的を満たす為に、多くの登場人物がいくつもの嘘を重ねていることにも、今後のドラマの展開の伏線があるように思う。
存在証明
現実世界でも、ネット世界でも、どうやって自分の存在を証明するのだろう?制度やシステムの中での存在証明と考えても良いが、ドラマのテーマは、更に深く突っ込んでくるようにも思う。
自分らしい自分を誰が気づいてくれるのだろう?それが、本当の意味で、つまり、自分にとっての「存在証明」ではないだろうか?ハルやナカジだけじゃない、ドラマの中の人物のすべて、あるいは、僕自身を含めて、この世界に存在するすべての人にとって、「自分らしい自分であることの存在証明」は、とっても深いテーマだと思う。
反セルフブランディング
頭の中で少し倒錯するのを覚えながら、Twitter 上のタイムラインを眺めていると、@yukari77 さんの呟きから、「反セルフブランディング」という単語が、僕の目に飛び込んで来た。
何気なく、リンクボタンをクリック。
「ツイッターノミクス」著者、タラ・ハントさんへのインタビュー記事の中で、セルフ・ブランディングの質問が目を引く。
Q. ソーシャルネットワークでセルフブランディングをする人へのメッセージは?
A. 私はセルフブランディングやパーソナルブランディングという考え方には反対。生身の人間らしく、正直でいた方がもっと個人レベルでつながることができる。ブランディングとは、そもそも、他者との差別化と考えてみると分かりやすい。さまざまなメディアを通じて情報が伝わるので、それをコントロールして、あらかじめ設定したイメージに近づける為の手法として捉えてみる。
ハントさんは、「反セルフ・ブランディング」とは、自分が理想的に思い描いている自分のイメージに近づけるような言動をしても見抜かれちゃうぞ、と言っているのではないだろうか?
僕は、自分自身を見失うようになる虚言を重ねるくらいなら、自分が信じる正論を吐くことがとても大切に思っている。なので、「反セルフ・ブランディング」の考え方は、とても気に入った。ぜひ、ハントさんの本、「ツイッターノミクス」を読んでみたいと思う。
なるほど。
この「反セルフ・ブランディング」は、このドラマのテーマにはピッタリ来るかもしれない。そう考えてみると、「素直になれなくて」という番組タイトルは、まさに、このドラマに相応しいタイトルだと思う。
うーむ。上野樹里さんにとっても、大変な役であることは間違いないようだ。
でも、このドラマのテーマが、「反セルフ・ブランディング」にあるならば、彼女の本質、彼女らしさが醸し出す存在感は、とても重要だと思う。
僕なりに素直になって、言ってみる。
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