「ヒューマン・センタード・デザイン(2)」において、以下のように書いた。
どのような大きさのサービスであれ、すべてのサービスは、
から構成されている。
しかし、実際にサービスを使う場合、つまり、この2つの要素を使いこなすのは、
ユーザの意志
である。
個人の価値観が多様化してくると、サービスを設計する上で、ユーザをどのように捉えるかが重要な問題になる。
人と人の会話において、会話する相手が変わる度に、自分の表現方法を変えることは難しい。現実世界に目を向けてみると、こうした表現方法を変えることを嫌って、世代間のコミュニケーションに不具合が起きている、ように思う。
ここで、「ユーザ・モデル」として紹介した「ペルソナ」を思い出して欲しい。
「ペルソナ」を使うと、現実世界で起きているコミュニケーション・モデルの不具合をうまく説明できることが多かった、ように思う。
これまで、「サービス」が設計される場合、「サービス」と「ユーザ(サービス利用者)」という関係でコミュニケーションを考えることが一般的であった。
「サービス」提供者は、「ペルソナ」を使って、より多くのユーザの好みにあった表現に創意工夫をこらしてきた。
しかし、さまざまな個人ブログのようなコンテンツをみていると、ブログ・サービス自体に利用者が期待しているものは、ますます、「情報的要素」の比率が高くなってきているように思う。勿論、さまざまなメディアを使いこなして表現されるコンテンツに人気がない訳ではない。
こうした傾向をちょっと説明してみよう。
例えば、ブログ・サービスを中心に見ると、発信者(ペルソナ#A)と受信者(ペルソナ#B)の関係は、以下のようになる。
ペルソナ#A ブログ・サービスが提供されているサーバに、コンテンツをアップロードする。
ペルソナ#B 同じサーバにアクセスを行う。コンテンツが気に入れば、ブックマークを行う。
ところが、厳密には、このコミュニケーション・モデルは、不完全なものと言える。
そこで、次の図を併せてみて欲しい。
ペルソナ#B 検索サービスを使って、ペルソナ#Aのブログを見つけなくてはならない。
では、このふたりのペルソナを繋いだものは何だろうか?
- 検索に使ったキーワード
- 検索結果として表示されたブログの抜粋
文字情報がとても重要な役割を果たしている。これは、個人のブログだけ無く、政府、自治体、企業などから発信される情報でも、大きく異なることはないだろう。
折角なので、もう少し理解を深めてみよう。
仮に、ペルソナ#Bもブログによって情報発信をしていたとすると、ふたりのペルソナの関係には、以下のような関係が生まれるかもしれない。
そして、このペルソナの関係を一つのサービスとして表現すると、以下のような図になる。
そう。気づいて頂けただろうか?
これが、ソーシャル・ネットワーク・サービスのコミュニケーション・モデルとなる。
このように、
- 検索サービスを使ってブログを探して、気に入ったブログ(情報)をブックマークする場合
- ソーシャル・ネットワーク・サービス上で、フォローしている人の呟き(情報)をリツリートする場合
それぞれのユーザ・ワーク・モデルは、とても似ている。
そして、ペルソナとペルソナ、つまり、ユーザとユーザを繋ぐ場合、「ツール的要素」より、「情報的要素」がより重要な役割を果たしていることが判る。
2010年現在。「ユーザの意思」を決定するには、言語を中心とした「情報的要素」がとても深く関わっている。言語をただの文字や言葉として捉えるのではなく、同じ言葉であっても、さまざまな受けとめられ方があるような、そういった問題についての見識を広めることが重要に思う。
それは、これまでの人類の歴史がそうであったように、余計な衝突を回避させてくれる、と思う。
この問題を解決する為の切り口として、「言語の次元」を読んで頂ければと思う。勿論、この内容がすべての答えになるとは思っていない。実際、言葉が無いことで衝突が起きる場合もあれば、言葉があることで衝突が起きる場合もある。然し、どのような衝突が起きた場合でも、ひとつひとつのことば、その言語の次元を、都度、「パラフレーズ」することができれば、新たな展開が見えてくると思う。
「ヒューマン・センタード・デザイン(1)」からの続き。
「悪い記憶」は、どうして生じるのか?
「悪い記憶」の発生している所を突き止め、そこに具体的な手段を施す必要がある。
俯瞰的な「コミュニケーション・モデル」は、サービスの全体像を把握する上では、とても便利だが、「サービス全体として良質な記憶」を特徴づける為のコンセプトにはなり得ない。
森全体を見て、木が何か、が見えてこなければ意味が無い。
最初に知っておくべきことは、一本の木をどうやって健康的に育てることができるか?では無いだろうか。
「パーセプション・モデル」の図を思い出して欲しい。
ユーザの連鎖的な行動は、「パーセプション・モデル」の「記憶層」に記録されたユーザの記憶に依存している。だから、「パーセプション・モデル」の「記憶層」とは、ユーザの記憶が記録されたデータベースのような役割を担っている。
一方、このデータベースに「記憶」が記録される直前の判断は、「経験層」で行われている。特に、「経験層」に対する考え方を決定することが、サービスのコンセプト、あるいは、サービスの方向性を決定づける、と言っても過言ではない。
大きな森の中に生えている一本の木を見るように、サービスを構成する一つの小さなサービスを考えてみると、大切なことが見えてくる。
どのような大きさのサービスであれ、すべてのサービスは、
から構成されている。
「情報的要素」には、ある機能を表す語彙のようなものから、機能を解説するための文章、あるいは、商品の魅力を訴求するキャッチフレーズやコピーのようなもの、事故や事件などの真相を解明しようとする記事、ユーザ同士が情報を交換しあう会話のようなものに至るまで、幅広い情報が存在する。勿論、これに加えて、音、音声、音楽、写真、図画、表、なども、情報的要素である。明らかなことは、すべてのユーザの「満足」するような画一的な「情報的要素」は無い、ということだ。
こうした状況において、ユーザに対して適切な「情報的要素」を提供するには、それぞれのユーザが置かれた状況や文脈を解明することが、何よりも不可欠だ。漠然としたユーザ・モデルを精査することも必要だが、なぜ、ユーザが、その情報に興味を抱いたのか?を解明する必要がある。
一方、「ツール的要素」には、ボタンを押すと別のページに飛んだり、商品をカートに入れたり、パスワードを再発行したり、そうした、ある行為とそれに伴う対話的な結果が期待される。この要素を適切に開発することは、ある種の困難が伴う。なぜなら、開発者自身が自らの記憶に照らして、ユーザの「満足」が何か解っているような感覚で開発してしまう可能性があるからだ。「ツール的要素」を適切に開発するには、開発者が錯誤しないように、対象となるユーザが何をしたいと望んでいるか、明確にしておく必要がある。
「情報的要素」と「ツール的要素」。この2つの要素は、「ユーザ・ワーク・モデル」と「システム・ワーク・モデル」のそれぞれの根っこに繋がっている。だから、根本的な解決には、常に先行して「情報的要素」あるいは「ユーザ・ワーク・モデル」に取り組むことから始めるべきだ。
では、ユーザの「満足」はどのように得られるのか?
まず、ユーザに対して「情報的要素」がどのような作用を及ぼすのか、そのことを明確にすべきだ。その答えは、「経験層」が、「操作性・利便性・信頼性」に分かれていることに着目することで見えてくる。「操作性・利便性・信頼性」の3つの評価を阻む要因を見つけ出し、そのひとつひとつに対策を図ることで「悪い記憶」の発生を抑えられ、ユーザが「満足」を得ることができる条件が整うはずだ。
「経験層」を、この3つの過程に分けて評価することで、「情報的要素」と「ツール的要素」のいずれの要素に対してでも、より深く再考できる視点を与えてくれるはずだ。
さあ。これで、問題が見えてきた。
「ヒューマン・センタード・デザイン」のもっともホットで、もっとも重要な課題は、「ユーザ」と「情報的要素」の関係を解明すること。その点は、もはや疑いの余地はないだろう。
続き。
ここでは、これまで取り上げてきた3つのモデル
の説明を読んで頂いていることを前提に、以下の図を見直してみよう。
対話的なシステムの設計では、しっかりとした「ユーザ・ワーク・モデル」を設計することで、「システム・ワーク・モデル」の完成度が高まる。「ユーザ・ワーク・モデル」は、とても重要な役割を果たしている。
「パーセプション・モデル」で説明したように、ユーザの「良い・悪い」の直感的な判断に基づいて、次の行動が決定される。
ユーザが抱く「良い・悪い」の判断は、ユーザの記憶に残り易い。特に注意すべきは、良い記憶よりも、悪い記憶の方が、長くユーザの記憶に残ることだ。逆に、良い記憶は、次の行動に直接的に結びつくので残りにくい。
その連鎖的な行動を図にしてみると、次のようになる。
例えば、ホームページを閲覧するユーザが、いくつものページを移動することを考えてみて欲しい。ひとつひとつのページを遷移する際、「良い記憶」が残ることは大切なことだが、「悪い記憶」が発生する度に「離脱(Break away)」が起こる。これは、サービスにとって、最悪の事態だ。
言うまでもなく、「サービス全体として良質な記憶」は、とても競争力のあるサービスになる。例えば、優れたユーザ・インタフェース・デザインが施された製品を使うと、特別な体験をしたと感じるようになり、やがて、その製品を手放したくない特別な思いになる。
もっとも、このような特別な思いにさせる背景には、「他のサービス(製品)では、こうはウマくはいかなかった」といった「悪い記憶」との比較により「良い記憶」が協調される可能性を指摘しておく。
だからこそ、「サービス全体として良質な記憶」が目指すべき最高峰にあることを忘れてはいけない。
ユーザは、一連のサービスに対して「期待(Expectation)」を抱いて行動を開始し、連鎖的な行動を繰り返す。その結果、ユーザは「期待」に対する結果に「満足」を得ることで、一連の行動が「成功(Success)」したと考える。
「良い記憶」が積み重なって「サービス全体として良質な記憶」が作られるのだから、まず、「悪い記憶」の発生を減らし「離脱」を無くすように取り組まなくてはならない。
続く。
ソーシャル・メディアの到来により、コミュニケーションは、とても複雑な問題を抱えている。しかし、コミュニケーション・デザインを考える立場からすると、基本的な事柄が特に変わっているようには思わない。
では、何が変わったのか?
人のパーセプション(感じ方)が変わった
のだと思う。
では、これまで述べて来たこと
を前提に話を始めよう。
まず、この図(A図と呼ぶ)は、「コミュニケーション・モデル」のもっとも小さな単位を表している。
次に、この図(B図と呼ぶ)は、「ユーザ・モデル」で示したユーザが実際に操作をする際に、どのような切り口からデザインを考えるかを表している。
パーセプション・モデル
そして、この図(C図と呼ぶ)は、「ユーザ・モデル」で示した以下のB図と同じ時間の流れのなかで起こる、ユーザのパーセプション(感じ方)をもっと砕いた形で表している。これを、「パーセプション・モデル」として考えてみる。
B図が左回りに回るように、時間が流れているのに対して、この図では、上から下に移動する流れがあることに注意して欲しい。
第一層
A図の「期待(Expectation)」と「反応(Response)」が書かれている。但し、「反応」は、最上層にある「評価」と、最下層にある「離脱(Break away)」に分かれていることに注意して欲しい。
第二層
ユーザ・ワーク・モデルの流れを表している。
- 接触(Accessible)
- 認識(Findable)
- 好感(Desirable)
- 入力(Input)
- 出力(Output)
- 認識(Findable)
- 好感(Desirable)
破線で囲まれた矢印は、心理などのユーザの内面的なものを表している。実践で囲まれた矢印は、動作や感覚などのユーザと外界とのやり取りを表している。
ここで、注意してみると興味深いことが判るはずだ。
入力(Input)=行動(Action)
出力(Output)= 接触(Accessible)
のように捉えてみると、以下のように書き換えることができる。
- 接触(Accessible)
- 認識(Findable)
- 好感(Desirable)
- 行動(Action)
- 接触(Accessible)
- 認識(Findable)
- 好感(Desirable)
そして、「接触」「認識」「好感」「行動」がワンセットになっていて、C図では、次の「行動」にあたる「入力」が記述されていないことがわかる。出力された結果に対する「反応」を無視すれば、B図の左側だけを繰り返すことになる。
第三層
第二層とは対照的に、この「経験(Experience)層」には、B図の右側にあった文字が並んでいる。
- 操作性(Usable)
- 利便性(Useful)
- 信頼性(Credible)
一般的に、「操作性」を入力するまでのことと思っている人もいるかもしれないが、それは間違っている。インタラクションのように、操作に対する直接的な反応を切り離して考えてはいけない。
「操作性」不満を抱く人は、ここで離脱する。
「利便性」不満を抱く人は、ここで離脱する。
「信頼性」不満を抱く人は、ここで離脱する。
「経験層」が、この3つの段階に分かれていることに是非注目しておいて欲しい。
第四層
「記憶(Memory)層」は、良いか、悪いか、を決定する。それによって、次に進むか、「離脱」するかが決まる。
ここでいう、「記憶」とは、ひとつひとつの言葉の意味の理解が、ひとりひとりで異なることと同じように考えている。つまり、ある個人の記憶に照らして良い記憶であるからと言って、別の個人の記憶に照らしても良い記憶であるとは限らない。
それでも、どのような個人を想定するかは別にして、良い記憶として残る場合には、継続して情報を得ようとする「次への行動」に繋がる。逆に、悪い記憶として残る場合には、「離脱」に繋がる。
現在、僕は、この第四層以下の問題に取り組んでいる。この問題を噛み砕こうとすると、「言語の次元」という話を真剣に考える必要がある。興味のある人は、コメントを残すようにしてもらえれば、できるだけ、その点を説明する機会を用意したいと思う。
また、ソーシャル・メディアについての話は、既に書いてきているので、タグをベースにして呼んでみて欲しい。特に、ソーシャル・キャリアーに関する記述は、この第四層に関わってくる問題をたくさんはらんでいるので、自分なりの言葉で、よく噛み砕いて欲しいと思う。
さて、ここに述べたことを簡略して図にすると、こうなる。
ユーザ・モデルとは、コミュニケーション・モデルを利用するユーザ自身のことをさす。
コミュニケーション・モデルの中のユーザは、漠然としたユーザではなく、適切な手法に基づいて設計されたユーザ・モデルであるべきだ、と思う。実際、ユーザ・モデルの設定が行われていない場合、実際の運用を行ってみえてくる、いろいろな齟齬がどのような原因から生じるものか判らなくなってしまう。ユーザ・ワーク・モデルの精度を上げることを放置して、システム開発を継続すると、やたらと立派なシステムが出来上がってしまうのだが、実は、ユーザのニーズを満たすことの無い仕様書だけが山積みされる結果を生み、システム・ワーク・モデルとしても完成に近づけない。
ペルソナ
その為、コミュニケーション・デザインの世界では、ユーザ・モデルを「ペルソナ(Persona)」のようなある種の人格設定を行ったりする。
あなたの周りにいる人、ひとりとって見ても、あなたとどれだけの好みが異なるか?考えたことがあるだろうか?もし、その人が、あなたよりも身長が高ければ、その人は、あなたと異なった視界で、この世界を見ているはずだし、あなたより細身だったら、今の室温が寒いと感じているかもしれない。
僕は、これまで、ペルソナを設定する際には、「使い易さ(Usability)」と「親しみ易さ(Affinity)」の2つの切り口から仮設していた。
- 「使い易さ(Usability)」
- 「親しみ易さ(Affinity)」
そして、その切り口に対して、以下の7つの評価ポイントを設定してきた。
- 「価値がある(Valuable)」
- 「信頼できる(Credible)」
- 「役に足つ(Useful)」
- 「使いやすい(Usable)」
- 「アクセスしやすい(Accessible)」
- 「見つけやすい(Findable)」
- 「好ましい(Desiable)」
その結果、
のような絵を描いて考えるようにしている。
この図は、「コミュニケーション・モデル」の時に使用した図と同じことを表していることに注意して欲しい。
コミュニケーション・モデル
コミュニケーション・デザインのなかでは、ユーザは、一連のサービスに対して「期待(Expectation)」を抱いて行動している、と考える。そして、ユーザは、「期待」に対する結果に「満足」を得ることで、一連の行動が「成功(Success)」したと考える。
基本的に、この図のように、コミュンケーション・モデルには、「ユーザ・ワーク・モデル(User Work Model)」と「システム・ワーク・モデル(System Work Model)」の2つのモデルを同時並行して考える。なぜなら、「ユーザ・ワーク・モデル」と「システム・ワーク・モデル」の2つのモデルは、表裏一体の関係にあるからだ。
ユーザ・ワーク・モデル
「ユーザ・ワーク・モデル」は、ユーザの動作を説明する。
システム・ワーク・モデル
「システム・ワーク・モデル」は、ユーザの動作を満たす、さまざまなシステムの流れを説明している。
コミュニケーション・デザインでは、ここで示した、コミュニケーション・モデルを用いる。次の図は、コミュニケーション・モデルのもっとも小さなモデルを説明している。
ユーザは、「期待(Expectation)」に基づいて、「操作(Operation)」を行い、「処理(Process)」された結果が「表示(Presentation)」された内容を見て、「反応(Response)」を返す。
コンピュータを使ったインタラクションとは、この図のようなコミュニケーション・モデルとして捉えると判り易い。